「かたやき小焼き」の物語

 

●伊賀上野城《其ノ壱》

むかし むかし、伊賀の里に夢蔵という忍者の男の子がいた。

この里では人々がお城の高石垣づくりの真っ只中。

えっさ、ほいさ、みんなでつくるよ 高石垣を

日本一の石垣だ 「かたやき」ほおばりゃ 力が湧くよ

みんなの夢を 積み上げよう!

するとお母さんたちが、かたやきを持ってやってきた。

みんな輪になってのおやつの時。

「夢蔵、おっきな石は重かろう? みんなの夢が詰まっているから。

この日本一の高石垣ができたら、きっとみんなが幸せになれる。

もう一息だ。さぁみんなで顔晴ろう」

♪ 夕焼け 小焼け かたやき 小焼き ♪

 

●忍者《其ノ弐》

むかし むかし、伊賀の里に夢蔵という 忍者の 男の子がいた。

夢蔵のお父さんは 伊賀忍者の パイオニア。

出陣の日が 近づくと夕焼けあたる 納屋からは手裏剣を 手入れする音

「カシーン、カシーン!」

奥の土間からは 甘くて芳ばしい香り。

「夢蔵や、ちょっと 焼き加減を 見といておくれ」とお母さん。

夢蔵が それを こっそり パクリ!

「これを食べると とっても 元気に なれるんだ」

そして お父さんのような 将来立派な 忍者になるのを 夢見る 夢蔵であった。

♪ 夕焼け 小焼け かたやき 小焼き ♪

 

●赤目四十八滝《其ノ参》

むかし むかし、伊賀の里に夢蔵という 忍者の 男の子がいた。

今日も 犬の堅丸と いつもの 滝行。

ピョン ピョンと 飛ぶ堅丸。

「今日こそ 上手に 飛び石渡りを やってみせるよ」

あとをついてく 夢蔵は ツルンと すべって 浅瀬に ドボーン!

さてさて ここらで ひと休み。

「かたやき 食べて さぁ、も一度 挑戦だ」

夢蔵 みるみるうちに 元気になった。

今度は 飛び石 ピョンピョンピョン。

「ありがとう 堅丸 また来よね」

♪ 夕焼け 小焼け かたやき 小焼き ♪

 

●さるびの温泉《其ノ四》

むかし むかし、伊賀の里に夢蔵という 忍者の 男の子がいた。

今日は 厳しい 修行の 合間の ひと休み。

「そうだ 湯治に 行こう」

「わぁ 」ザボーン!

「あったかぁい!」

ゆっくり お湯につかったら 何だかお腹が すいてきた。

「ぽりぽり カリカリ」

その おいしそうな 音につられて ケガをした お猿が やってきた。

「お猿さんも いっしょに どうぞ」 と 夢蔵。

そして 渡したのは「かたやき」 お猿さんも パクリ。

温泉の おかげで 傷も癒え、みんな元気になって よかった よかった。

♪ 夕焼け 小焼け かたやき 小焼き ♪

 

●伊勢神宮《其ノ五》

むかし むかし、伊賀の里に夢蔵という 忍者の 男の子がいた。

伊賀の国から 山を飛び 谷を越え ―

おじいさんと はるばる『お伊勢さん』に やってきた。

毎日元気で 無事に暮らせることに 感謝のお礼参り。

『二拝 二拍手 一拝』

「しまった! ぼくのおさい銭がない!」

「そういえば外宮さんは 食と豊穣の神様だ。

『かたやき小焼き』を奉納しよう」

それから二人は 内宮にお参り ―♪

「内宮さんは 日本人の氏神様なんじゃよ」と、おじいさん。

二人は かたやきをおやつに伊勢茶で ぷくぷく いっぷく。

♪ 夕焼け 小焼け かたやき 小焼き ♪

 

●熊野古道《其ノ六》

むかし むかし、伊賀の里に夢蔵という 忍者の 男の子がいた。

伊賀の国から 山を飛び 谷を越え ―

今日の修行は『熊野古道』

石畳 ヒノキ林の登り坂

お地蔵さまの前にしゃがみこんでる おばあさん。

「これを食べると 元気になるよ♪」

取り出しましたる『かたやき小焼き』

お地蔵さまにもおすそわけ。

さあ さあ、念願の 馬越峠へ 出発だ!

おばあさんおぶって 一歩一歩

とうとう 峠に辿りつく。

振り返ると 熊野灘 ―

「ありがとう 夢にまで見た 馬越峠」

♪ 夕焼け 小焼け かたやき 小焼き ♪